柔能く剛を制す
星野 やはり日内地さんの感性や考え方は共感できますね。 日内地 僕の方こそ、この事務所のリノベーションを手がけさせていただいて、星野さんからはいろいろな刺激をいただきました。 星野 とんでもない!「こだわりが過ぎる!」と時々周りから言われる僕の意見をさらりと聞いて、全面的に取り入れるのかと思えば、それ以上のものを出してくる。だけど押し付けない、でも妥協もしない。物事の運び方は柔らかいのに、いつの間にか日内地ワールドに引き込まれてるという感覚。そしてそれが全く嫌ではなく心地いい。しかも、俺のこだわりは何だったんだと思うほど、素晴らしい方向を提案してくれたし。「柔能く剛を制す」っていうのは、日内地さんのためにある言葉だと思いました。 日内地 ありがとうございます。そう言われるのは初めてです。でも、そう思ってくださる方がいるならば、僕のやり方は間違ってもいないのだと自信になります。柔軟に間口を広げて、でもブレずに物事を進めるのは難しいことも多いですけれど。それでこの10年、悩んだこともいっぱいありますし。――実は、今も悩むことがひとつ。 一言で言えば、値段とお客様の層。浜松と東京では価値の感覚が違うことは分かっていましたが、東京では「いいね、そうだよね、これくらいするよね」となるのが浜松では「いいけど高いね」になってしまう。ここがジレンマ。売りたいけど、価値のあるものを安くは売りたくない。 星野 じゃあ、僕が結論を言いましょう(笑)。高い方に会わせてください。価値があるものには理由がある。それは職人さんの技術だったり、デザイナーの感性だったり、いろいろですが、そういうものを付加価値と言ったりします。でも僕は、正当な対価だと思うんです。そこにお金がかかるのは当然ですし、買う人はそこにお金を払うべき。そういう部分をリスペクトしてくれるお客様は、日内地さん、「アパートメントストア」と感性や価値観を共有してくださる方たちだから、顧客様として長くお付き合いしてくださるでしょう。そういう方々こそを大切にしていった方がいいのでは? 日内地 分かっていても、踏み出せないでいましたが……新しいステージに行くためには選択も必要ですよね。 星野 東京を飛び越えて、世界へチャレンジできる仕事だと思うので、ぜひ新しいステージでの活躍を期待しています。そして僕の身近なモチベーションになってください。 日内地 星野さんの一歩先を歩き続けられるように、頑張ります。 星野 事務所のリノベーションと今日のインタビュー、本当にありがとうございました。ここで僕も突き抜けた創造ができるように、頑張ります。
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