<網走湖にて〜わかさぎ釣りでのひとコマ〜>  アソビの中にも“センス”がある

“センス”の定義はフィールドでもデザインでも同じ

田中こうやって糸を垂らしていって、重りがコツンと湖底に着いたら、少しリールを巻き上げてチョンチョンと糸を揺らす……と、ホラ、釣れた。
星野え?そんなにアッサリ釣っちゃうわけ?!
田中俺が釣れたんだから、隣にいる星野もすぐ釣れるはずだよ。ある程度群れになっているからね。あ、また釣れた。
星野さすがネイチャーガイド。コツってあるの?
田中こう、ツンツンときたら、クッと軽く引いてみて。糸が斜めに動いていったら、釣れた証拠。あとは巻き上げるだけ。
星野そう言われても……ツンツンの感覚すら来ないんだけど。 —そうこうしている間に、田中さんとスタッフが交代。糸を垂らした数十秒後、スタッフがいとも簡単に釣り上げる。
星野何でだ?
田中うーん……こういうアソビにも、センスってあるんだよね。
星野俺には、わかさぎ釣りのセンスがないと?
田中センスを売りにしている職業だし、スポーツのセンスがある星野に言うのは酷だけど……。あ!オジロワシだよ!上を見て!
星野おお!近い!
田中網走湖は遭遇率が高いけど、こんなに近くを飛んでいるのを見られるなんて、すごくラッキーだよ。星野、“持ってる男”だね。
星野そこ褒められても。だけど、音もなく飛んで来たのに、よく気がついたね。他の(網走湖でわかさぎ釣りをしている)人たち、誰一人、気付いてない。
田中ネイチャーガイドの“センス”かな。
星野さっき、アソビにも“センス”があるって言ったけど、ネイチャーガイドにもやっぱりある?
田中あるね。例えば、今みたいなこととか、夕べのナイトウォッチングもそうだけど、動物を誰よりも早く見つける能力は“センス”だと思う。
星野それって、訓練で身に付かないもの?
田中もちろん身に付くけど、スタートの時点で差が出てる。後進のネイチャーガイド志望の子たちを見ていて、ある子とない子はやっぱり違う。