て音は、調香するときに欠かせないものです。いろいろなエピソードやバックボーンを知ることで、音が混じり合って和音やリズムがつくられていくことで、イメージが膨らんでいきます。 星野 それは、持って生まれた才能ですよね。もしかして、絶対音感を持ってます? 沙里 はい。だから、というわけではないと思いますけど、音符に変換されることが自然なこととしてあるというか……。先日も、満月の日に抽出した黒文字の香りを「聞いた」瞬間、弦楽器のbフラットの音が浮かんできたり。柑橘系の香りは管楽器の音に変換されたり。極めつけは、幼少の頃、人の話す言葉すら音符になって聞こえていたという(笑)。 星野 それって、例えば「あのね」という言葉が「ドレミ」に聞こえるとか? 沙里 はい(笑)。すぐに音楽の世界に入っちゃって、ちょっと変わった子どもだったと思います。 星野 そんな頃から類い稀なる才能というか、素晴らしい感性をもっていたってことですよね。音符に変換されることが当たり前なんですね。 沙里 無意識に、そうなってしまうんだと思います。 星野 それに、沙里さんと話していていつも思うのは、言葉のチョイスがいちいち深いなと。語彙が豊富というありきたりの表現じゃ足りない。音楽を嗜んでいたからか、日本語の繊細なニュアンスを心のままに感じ取って、それを伝えているからスッと心に落ちてくる。 沙里 とてもうれしい褒め言葉です。香りと共にあるおかげです。 星野 そんな沙里さんにとって、香りとは? 沙里 音楽です(笑)。
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