ています。それはスポーツに限らず風景などでも同じで、レンズを通した先にある一瞬の光や、空気感、時間を残すことができるのが写真の魅力だと思うんです。フィルムで撮っていたときはより強く、感じていましたね。
星野 一瞬を捉えるのは、知識や技術もさることながらタイミングというか、その瞬間を感じ取る感性も大事ですよね。それって、経験を積めば誰にでもできるというものじゃない。僕たち広告のデザイナーもそうですが、広告のカメラマンも、それぞれの商品なりの世界観を「創って撮る」という感覚。そこには創造性のほかに感性も必要ですが、そこしかないという一瞬を感じ取って収める感性とは、ちょっと感覚が違うなと。いつ来るか分からないし予測もつかない、ましてや巻き戻すことなんてできない、本当にその一瞬しかない。そこを撮るのだから、本当にすごい。
谷本 そう言っていただけるのは、とてもうれしいです。けれど私は星野さんとは逆の考えです。私は創造性がないので、創り上げて撮るのはハードルが高すぎる(笑)。だから創造しながら撮る写真の方がすごいと思っています。生み出しているのは被写体であって、私は本当にそこにあるものを撮っているだけ。とは言っても、プレーしている人や周りの人たちがいてこそ感動や躍動のシーンが生まれるので、その人たちが見せてくれる一瞬の魅力や心の内を撮れるようにしたいとは、いつも思っています。
星野 谷本さんの中で、ラグビーはスポーツシーンを撮るという感覚と、選手を撮るという感覚、どちらの方が大きいですか。
谷本 ラグビーはどちらでもあって、どちらでもない気がします。きっかけは人物、選手を好きになったからですが、今はラグビーはすべてのプレーがカッコイイと思うし、美しいと思っているので、ラグビーというスポーツを撮ること自体が好きだなと思うんです。もちろん、ファンの選手もいるし、好きなチームもありますが、ラグビーを撮るときは人物やスポーツシーンといった感覚なく、感じたままに撮っている、ニュートラルな気持ちで撮れる唯一の被写体だと感じます。