1996年、癌など難病患者の治療に携わる菅野賢一博士に師事し、菅野式食事療法を学ぶ傍ら、赤門鍼灸柔整専門学校で東洋医学を学ぶ。2000年、はり師・きゅう師・あん摩マッサージ師の国家資格取得。多数の治療家に師事しながら複数の治療院を掛持ち勤務し、鍼灸施術業務に従事。2003年、柔道整復師の国家資格取得。菅野博士の元から自立し、食事指導の修行のため全国の食の生産者を訪ね歩き、日本の食事情を実見する。

2004年、ボランティアとしてアジア各国で治療活動に従事。2006年、(株)SoRAを設立。そら鍼灸食養治療院開業。(株)星野リゾートとの共同事業で「森林養生」をスタートするなど、ホテルなどで宿泊型の生活習慣改善プログラムを展開。また、師である菅野賢一氏らとともに立ち上げた「日本食事療法士協会」で後進の育成も精力的に行っている。2011年安曇野移住。著書『からだと心を整える「食養生」技術評論社、他多数。

第一印象は裏切らない?

自分をどう見せたいかで着るものを変える

辻野ようこそ、安曇野へ!
星野お久しぶりです。まさかの着物ですか!てっきり辻野さんは作務衣かと思っていました。今日はCoffee and
Session本編初のハットを被らないファッションで、辻野さんの雰囲気に寄せたはずだったのですが、やられました。
辻野いやいや、星野アニキこそ(笑)。星野さんのファッションにハットは必須だと思っていたので、実はハットを被る構想もあったんです。
星野お互いのファッションがイメージできていたのに、裏をかいたらこれ(笑)。それにしても、随分着物を着慣れている感じですよね。普段から着物が多い?
辻野普段着は作務衣ですけど、こういった取材などで表に出るとき、最近は着物が多いですね。
星野イメージづくり?でも僕が辻野さんを知ったきっかけになったプロフィール写真は、スーツでしたよね。
辻野そうでしたね。でもその頃、しっくりきてないと思っていたんです。日本の伝統的な食文化を伝え、体現しようとしている人間が着るものは、スーツじゃないよなあ、と。
星野あれはあれで、似合っていましたけどね。でも、やっぱり作務衣や着物の方がイメージに合っていると思います。

辻野食事療法士として活動を始めた当初は、食養生という言葉が全く知られていなくて、何か怪しい勧誘というイメージを持たれていると感じていたんです。第一印象でマイナスイメージを持たれないようにと、スーツを着ていました。
星野プロフィール写真を見せられたときの知人の説明は、「イケメンでマダムたちに大人気だ」と(笑)。あのスーツ姿が初対面ならウケはかなりいいですよね。正解だったと思います。自分がどう見えるか、客観的に見えていますよね。
辻野自分の見せ方というのに、興味はありました。作務衣、着物、スーツ、そして洋服も。会う人や訪れる場所、その場の雰囲気など、TPOでファッションは変えています。 
星野そこまでバリエーションがあるって、かなりのおしゃれ上級者ですよ!ますます

親近感が沸いてきました。辻野さんを知るきっかけは一枚の写真でしたが、僕とちょっと顔が似てないか!?何とも雰囲気にコクがある人だなぁというのが第一印象。似ているなら思考も似ているのかなと興味を抱きました。食養生という考え方に共感する部分を見つけて、実際にお会いしてみたら、いろいろと掘り下げたい衝動に駆られました。辻野さんとの出会いで、第一印象は裏切らない?と改めて思いました。
辻野私も、星野さんと初めてお会いしたとき、とても似ていて驚きましたが、それ以上に、惹かれるものを感じました。第一印象は間違っていなかったと、私も感じます。
星野お互いをもっと知って、やっぱり中身も似ている!となったら気持ち悪いですね(笑)今日はいろいろお話聞かせてください。 

食養生の基本、心・太陽・空気・水・食物

水を求めて安曇野へ移住


星野
 辻野さんは6年前、東京から安曇野に移住してきたそうですが、きっかけはやはり『食養生』に関係しているのですか。
辻野 大きく捉えれば、そのとおりです。いずれは田舎暮らしをしたいと思っていました。ですが妻は根っからの都会人でしたし、移住はしばらく先になるだろうと当時は思っていました。
星野 それが覆るような、大きなきっかけがあったのですね?


辻野
 子どもが生まれたことと、震災の影響は大きかったですね。子どもを田舎でのびのび育てたいと思う気持ちは、田舎度合いは違いましたけど、妻も持っていましたし、水や食などさまざまななことを考えたとき、今だと決断してくれました。
星野 安曇野はもともと決めていた土地だったのですか。
辻野 いえ、候補は日本全国。さまざまな状況や条件を考えながら絞って、日帰りや泊まりで候補地を実際に自分たちの目で確かめ、安曇野に決めました。妻も安曇野の景色や環境を気に入ってくれましたし、移住者が多いというのも安心感がありました。
星野 移住される方が多いというのは、納得できます。僕も旅行で何

度か安曇野に来たことがありますが、景色は良いし、居心地も良い。こんなところに住んでみたいと何度思ったことか!
辻野 安曇野って、訪れた人をそう思わせる魅力がありますよね。大自然の空気感と同じように、人々もあたたかい。実際、他所から来た人たちを受け入れてくれる懐の深さがありますしね。移住者が多い理由はさまざまありますが、一番大きな理由はそこじゃないでしょうか。私の場合は、食養生のような考え方を持って生活している人たちが多く集まっているというのも、惹かれた理由のひとつでしたが。
星野 辻野さんのような人が、安曇野には大勢いる……。
辻野 そうです。私のような変人が(笑)。
星野 僕はそこまで言っていませんよ(笑)。自然派というか、そういう方々にとっては、僕らが思う以上に魅力的な土地なのでしょうね。
辻野 だからでしょうか、安曇野は群を抜いて、自然保育の幼稚園がとても充実しています。私のような考え方の人たちが移住を選んだ大きな理由になっていると思います。
星野 子育てに最適な環境が整っているんですね。最終的に決め手となったのは、そこですか?
辻野 もちろん大きな理由にはなりましたが、一番の理由は、水、ですね。安心・安全・美味しい水を求めて移住先を選定したと言っても過言ではありません。
星野 水、ですか。辻野さんの著書「からだと心を整える『食養生』」を読ませていただきましたが、『食養生』では健康にとって大切な順番が、心・太陽・空気・水・食物となっていましたね。水と食物、直接口にするものが最後にあるというのに驚きました。
辻野 星野さんがいらっしゃったら、ぜひここの水を飲んでほしいと思っていました。私もよく、ここに水を汲みに来て、日常生活で使っています。
星野 ん、うまい!こんな美味しい水が毎日飲めるなんて、食事もさぞや美味しいでしょうね。うらやましい。水が決め手になったという気持ち、今なら共感できます。

辻野夜明けとともに起き、太陽の光を取り込んでから1日を始める。身体のリズムをつくるのに、太陽はなくてはならないものです。
星野太陽の光を取り込む。まさに、食べるという感覚ですよね。とても腑に落ちました。今思ったのですが、腑という字は五臓六腑の腑と同じ。太陽食という言葉が腑に落ちたのは、太陽を体内にある臓器に取り込むからでしょうか。
辻野そうかもしれません。太陽は、生きとし生けるものの命の糧。太陽食が気血をめぐらせる原動力になっているんです。
星野気血。血液のことですか?
辻野食養生の考え方では、気も含まれるの

生きとし生けるものの根幹〝太陽食″

星野食物より水、けれど水より太陽の方が食養生的には優先順位が高いんですよね。
辻野その通りです。朝起きて、太陽の光を浴びるのはとても大事です。
星野〝太陽食″ですね!辻野さんの著書を読んで、その言葉に衝撃を受けたんですよ。太陽を浴びる、ではなく、食べる。言葉の響きに心を揺さぶられました。

で、気血と表現します。
星野気、ですか。食養生の本を読んでいて、気とは何ぞや?と、それだけがモヤッとしているというか、よく分かりませんでした。
辻野一言で言うと、生死。「血がめぐる」と言う言葉がありますよね。心臓が動いて全身に血をめぐらせることによって人は生きています。では、心臓を動かす原動力はどこにあるのか?古くから東洋医学では、血がめぐる生命現象の原動力は、気だと考えられてきました。突き詰めると難しいのですが、目に見えて存在しないけれど、何となく感じるもの。そのくらいの感覚で捉えてもらえばいいかなと思います。

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自己肯定が人を輝かせる

表現者はミステリアスであることが条件?!

星野 仙人と話をしているような気がしてきました(笑)。辻野さんは悩みがないんじゃないかと。
辻野 悩みとまではいきませんが、課題はあります。つい話が長くなってしまうんですよ。伝えようと熱くなりすぎてしまう。星野さんは?
星野 僕の悩みはですね・・・、闇がないこと。根暗な部分が無いんですよ。

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よく言われるんです、見た目に反して意外と健全だっていうような意味のことを。
辻野 それはそれで、ギャップがあって良いのでは?
星野 そうなのでしょうが……。僕の職業は商業デザイナーであってアーティストではありあせん。けれど、表現するというカテゴリーでは同じです。アーティストたちは自分の中の闇の部分を表現することで、作品を生み出しているように感じるんです。闇がある程おもしろいものを作る。彼らは自ら発したものが作品になっているけれど、自分にはどうも闇が見当たらないから表現できる素がない。自ら発することができていないのではないかと。そもそもデザインの仕事ってクライアントさんから課題をもらいますからね。自分を表現する場ではないんだけど・・・。
辻野 星野さんはファッションを通して、デザイナーという自分を表現していると思いますし、そもそも、会社を経営していることが表現していることになっていると思います。

星野 辻野さんに言われると、そうかな、と思ってしまう。発する言葉に説得力がありますよね。ちょっとこの機会に、もうひとつ相談してもいいですか?辻野さんはサラリーマン時代、人事を担当していたことがあったそうですが、面接で採用するかどうか迷ったとき、最終的に何で判断していましたか?
辻野 モテるかどうか、ですね。
星野 ええっ?!本当ですか?
辻野 軽いと思いますよね(笑)。ですが、本質は意外と単純だったりするものです。モテるということは、人として魅力があるからですし、コミュニケーション能力も高いということだと、私は思っています。
星野 なるほど。やっぱり説得力がありますね。
辻野 もうひとつ言うと、モテる人は自己肯定できている人でもあります。自分はこうだと発信して、周りがそれを感じ取る。輝いて見えるから、惹かれるんです。自ら発している気に、みんなが惹き付けられる、ということです。

 星野 気!まさかここにつながるなんて!
辻野 気になる、気を引く、気が強い。全部、気です。
星野 普段から使っている言葉の中に、こんなにもたくさんあったなんて。知らないうちに、気を感じていたんですね。
辻野 ちなみに、星野さんはモテますよね?見た目そのまま、自己肯定できていて、自らを発信している。つまり、気を発信している人=モテる人。けれど星野さんの魅力はもうひとつあって、周りに合わせることもできる。普通、周りに合わせるタイプの人は、相手の気に引っ張られているので、自分の気を吸い取られる感じで合わせている。だから疲れる。でも星野さんはちょっと違う。気をいろんなカタチにして、合わせてあげられるという感じ。水のような気を持っている人だなと感じます。そういうところにも、周りの人は惹かれるんでしょうね。
星野 すごい褒め言葉。ありがとうございます。ですが、表現者としてはやっぱり闇がほしい!
辻野 確かに、セクシーな大人としては闇があった方が良いですよね(笑)。ミステリアスな感じがしますし、魅力的。
星野 ミステリアスで魅力的。自分の中の闇を探してみたいと思います(笑)。

食養生とデザインの思わぬ共通点 

星野ミステリアスと言えば、僕は辻野さんの生活にとても興味があります。どんなサイクルで生活をしているのか、まさにミステリアス。
辻野そこは、闇があってミステリアスと言って欲しいところです。
星野すみません。それで、普段の生活は?
辻野朝日の出とともに起きて、まずお米を炊きます。散歩しながら太陽食をして、メールの返信など事務仕事をしてから朝食。子どもを保育園に送ったら、日中は鍼灸の治療やセミナーなど、仕事の時間。夕食はだいたい16時半から17時頃。子どもを寝かしつけるまでは、子どもとの時間です。就寝は11時頃ですが、子どもと一緒に寝てしまうこともあります。
星野食養生のお手本。健康的な生活ですね。僕は不健康な夜型から抜け出せない。今年は早寝早起きを目標にしていたのですが、全くできていません。
辻野太陽とともに起きる朝型生活は、健康的な生活習慣の基本。ですが星野さんの仕事柄、夜型の方が生活のリズムがつくりやすいのならば、夜型でも良いんです。それよりも、朝型になったり、夜型になったり、ルーティンがバラバラである方が不健康。食養生では、生活のルーティンが大切だとお伝えしています。
星野なるほど。食養生の考え方は、とても懐が深いですね。辻野心が一番大切なので、ストレスを感じない生活というの

が基本にあります。例えば、甘いものを食べてしまったと後悔したり、我慢したりするよりも、食べ過ぎないようにすれば良いというように。我慢してストレスを感じてしまったら長続きしないので、ルーティンもつくれない。心が健康であることが一番です。
星野 とてもシンプルですよね。情報過多な現代、健康に良いと言われるものが溢れていて、どれを選べば良いのか、ときには真偽を見極める目さえ求められる。けれど食養生は、大切にする順番が決まっていて、余分なものがない。
辻野 その通りです。みなさん、とにかく健康に良いと言われる情報があれば試して、溢れかえる情報に右往左往されているように思います。けれど、食養生の根幹が分かれば、そういった枝葉の情報に惑わされることなく、正しいもの、自分に合ったものを取捨選択できるようになります。
星野 今、食養生とデザインの共通点を見つけてしまいました。デザインの世界でも同じようなことがありますね。例えば、クライアントさんが「ここを目立たせたいから、色を赤にしてください」と言ったとします。そうしたら大抵は、赤にしてしまいます。間違いではないのですが、このクライアントさんの要望は「目立たせたい」が根幹であって、「赤にしたい」ではないんです。根幹が分かっていれば、与えられた情報の見極めができるんです。
辻野 相手の言葉を心がどう受け止めるか、ということですね。
星野 ここで心が絡みますか!辻野さんと話していると、どんどんいろんなものが浄化されていく気がします。

自然体で生きることは難しくない

大切なのは心のルーティン


星野
 聞けば聞くほど食養生は懐が深く、あらゆることに応用できますね。僕が興味を持ち、共感できたのも、そういった面があるからなのでしょうね。
辻野 先ほどは、日常のルーティンが大切だと言いましたが、人生をベースに考えたとき、心のルーティンの方が大切です。
星野 どういうことですか?
辻野 例えば、星野さんはどういう死に方をしたいですか?
星野 生き方じゃなく、死に方ですか?
辻野 そうです。私は100歳まで生きるつもりなので、80歳からが稼ぎ時だと思って、人生のプランを立てています。
星野 100歳!辻野さんは仙人を目指しているんじゃ?!いや、辻野さんならなれそうですね。質問とはちょっと違う答えかもしれません

が、僕は30歳を過ぎたとき初めて死を意識して、後悔しない生き方をしたいと思いました。60歳までのビジョンはありますが、その後のプランは特にないんですよね。
辻野 仕事中心のプランなのでしょうね。でも、意外です。
星野 辻野さんのように仕事と家族のバランスが取れているライフスタイルは、正直、憧れます。けれど、日々の時間軸が仕事中心で、人生のプランも仕事の優先順位が高い今のライフスタイルも、嫌いではありません。
辻野 それで良いと思います。明日死んでも悔いない人生を目指すのであれば、100%心のままに生きればいいんです。ただ、80歳まで自力で生活し、その後に死を意識するのならば、それなりに健康的なライフスタイル=食養生を取り入れる必要があり、努力と心とのバランスをとる必要がでてきます。つまり、心のルーティンというのは、人生のラストを決めることで初めて、その人が目指すべきライフスタイルが決まり、それによっては食養生の処方が異なってくるということです。ただ、今の星野さんは仕事中心で刺激のある生活をしています

 

現代日本の食文化を変えることから始まる

星野心のルーティンという感覚、これから持ち続けていきたいと思います。
辻野星野さんのような仕事なら、移住してもできると思いますよ?
星野そう、思うんですけどね。今の自分が安曇野に住んでも、時間軸はやっぱり東京時間だと思うんです。このスローな安曇野時間を満喫するライフスタイルにならない。それはもったいないなと。辻野さんは若い頃からこういった生活に憧れていたんですよね?
辻野それが、全く!サラリーマンでバリバリやっていた時代もありますし、食事療法士になっても、師匠についてあちこち飛び回る、仕事中心の生活でした。
星野師匠の影響ですか?
辻野そうですね。高校の頃にやっていたフィールドホッケーを通して鍼灸を知る機会があって、その仕組みの中に腑に落ちることがたくさんあったんです。調べていく過程で菅野賢一博士にたどりつきました。生化学の研究者から治療家に転身した経歴もインパクトがありましたが、東洋医学に基づいた食事を中心とした難病の治療方は衝撃衝撃的で、「現代のブラックジャックだ!」と思いました。高校を卒業してすぐに弟子入り。食養生の基礎も菅野博士から学びました。菅野博士からは「医者になれ」と言われましたが、東洋医学と食養生がとても面白くて、どんどん追求していくうちに、自分が実践しなくてはと思いました。
星野移住への準備で、最も大変だったことはありますか?
辻野ないですね。ですが、自分がプレーヤーだった頃は難しかった

よね?そういう人が今スローライフを始めたら、刺激が少なくなって逆にストレスになったりするものです。それは心に良くない。そのときの自分の優先順位と状況に合ったライフスタイルであればいいのかなと、星野さんを見ていると思います。私としては、星野さんにはぜひ60歳以降の人生を思い描いて〝死に方″を考えていってほしいなと思います。
星野辻野さんは今、心のルーティンができてきているんですね。
辻野今は子どもが中心の時間軸で、自分もそれが最優先事項。けれど80歳以降はバリバリ働く予定なので、拠点はまた東京になっているかもしれませんし、九州や北海道で暮らしながらバリバリ、かもしれません(笑)。
星野僕も焦らず、心のルーティンを整えて行こうと思います。
辻野ぜひ。そうすれば60歳以降のプランが見えてくると思います。

と思います。今はプレーイングマネジャーという立場に移行しているので、移住しても仕事がやれているのだと思います。今後は会社の仕組みづくりをもっと整えて、理念を共有できる仲間を増やすことが必要です。その上で、治療活動の時間も確保していければ、食事療法士としてのライフスタイルを成熟させていけるでしょうね。
星野 辻野さんの生活は、人間の在り方は本来こうあることが自然なのだろうと感じることができます。自然の摂理に帰り、従うことが自然なのだと。地球上の生命は太陽が命の源。太陽に育まれたものを食べて生き、死とともに土に帰る。とてもシンプルな輪廻の中で、人は生かされているのですね。
辻野 それが分かる星野さんなら、移住は難しくありませんよ。今すぐでも。
星野 世の中のスピードが安曇野時間に変われば、今すぐにでも!!
辻野 それは、私が目指すところですね。そのためには、日本の食文化を変えること。もともとのカタチに戻すというより、日本古来の食文化をベースに、無理なく現代のスタイルに融合させていくというイメージです。食文化が変われば、食事の時間や家族の団らんが増えていく。おいしく食べるようになって心が豊かになる。そしてさらに、おいしい食事をつくるようになって、日々の食材選びにもっと目がいくようになる。そういう食文化がつくられていけば、時間の流れはスローになっていくと思います。
星野 僕も自分で、自分からスローな時間軸をつくる一歩として、食事の意識改革をしたいと思います。手始めに、昼食のパンを「五菜一穀」にならって、おにぎりに変えることから始めたいと思います。
辻野 一緒に安曇野で、安曇野時間を共有する日が来るのを、楽しみにしています。

水を求めて移住を決めた安曇野。もうひとつの決定打は、移住先の下見で何度か訪れていた安曇野で「ここしかない!」と心が叫んだ景色との出会いです。有名な観光地・大王わさび農場近くにある宿からみた景色は、今も私のfavorite。澄み切った空と広がる田園風景、その背後に北アルプスの山々。安曇野のすべてを詰め込んだよ

うなスケール感と神々しささえ感じる空気感に、一瞬で心を奪われました。同時に、この土地で暮らしていくイメージが簡単に想像できてしまいました。ここを通るたび、季節ごとの表情を楽しみながら、当時のことを懐かしく思い出しています。

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「今回撮影にご協力いただいたお店」

舎爐夢ヒュッテ(シャロムヒュッテ)

シャロムとは「平和」という意味のヘブライ語。自然の環境に寄り添い、持続可能な生活を目指してオープンした複合コミュニティ。自然農園・宿泊施設・レストラン・雑貨店・イベントスペース・森の幼稚園があり、パーマカルチャーや自然農法、心地好い暮らしなどが学べ、自然や人から搾取しないシェアリングエコノミーを実現。平和な未来をカタチにした信州安曇のユートピアです。

Data

長野県安曇野市穂高有明7958
T 0263-83-3838
http://ultraman.gr.jp/shalomhutte/

  • Design tekuiji DESIGN
  • Photograph Indigohearts
  • Writer writer Moki